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卒業式の歌

いま、卒業式ではどんな歌がうたわれているのか僕は知らない。自分たちが卒業するときに歌ったのは「蛍の光」か「仰げば尊し」だったように記憶している。村野四郎作詞の「巣立ちの歌」も、どこかで教わった気がするのだが、果たして卒業式で歌ったのかどうか曖昧だ。

子供を育てなかったので、卒業式は自分の体験でしかない。そういう意味で自分はあきらかに欠損した人生を送ってきたという感触がある。欠損という言葉は悪い言葉なのかも知れないが、実感としてそう思う。

「仰げば尊し」は、恩師への思いが満ちていて、どこか保守的な思想の匂いがすることから、ぼくが通った学校の方針などで歌われなかったことがあったのかも知れない。思想的弾圧といってもいいのかも知れない。歌詞を読めば、さほど保守体制的とは思わないのだが、そこが思想の難しいところなんだろう。

「蛍の光」は、たとえばパチンコ屋や施設などの閉店時間に流れるメロディということで、ずいぶん歌の価値が下がった時期もあったが、今聞けば、いい歌である。ぼくはこの歌を、THE BANDの「ROCK OF AGES」の長いオルガン・ソロの中から流れてきて、感動した記憶がある。年末に流れる旋律として「蛍の光」は合っている。このTHE BANDのコンサートも年末から年始に掛けて行われたものだったのだろうか?

卒業式の痕跡を残しているものといえば、卒業証書を入れた筒、賞状筒というのだろうか、それが三本、書棚の上に載っている。中には自分が卒業してきた小学校、中学校、高校、そして大学の証書が入っている。ただの紙切れだが、ずいぶんお金のかかった紙切れである。両親に感謝しなければいけない紙切れである。

卒業式はまさに旅立ちの日であり、その後二度と会わない同窓生との最後の場である。高校の卒業式が終わって、体育館から教室に戻ってきた時、廊下を歩きながら、「これで高校という時代をおれは終えるのだ」という感を強く抱いたものだ。感傷的なのではなく、かなり冷静にそう思った。当時の同窓とはもう二度と会っていない。鈴川が死んでしまい、本当にそうなった。誰にも会っていない。そういうものなのだ。

   仰げば 尊し 我が師の恩
   教の庭にも はや幾年
   思えば いと疾し この年月
   今こそ 別れめ いざさらば

   互に睦し 日ごろの恩
   
   別るる後にも やよ 忘るな
   
   身を立て 名をあげ やよ 励めよ
   
   今こそ 別れめ いざさらば

   朝夕 馴にし 学びの窓
  
   蛍の灯火 積む白雪
    
   忘るる 間ぞなき ゆく年月
   
   今こそ 別れめ いざさらば
by kazeyashiki | 2011-03-07 13:15 | 暮らし | Comments(0)

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