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諸々想うこと

東北関東大震災によって日本の社会構造が変容してきている。大げさに言うのではなく、問い直されているものが多々ある。たとえば「オール電化住宅」などが一種の象徴であろう。この住宅に関しては東電だけではなく、私の住む近畿圏でも所轄の関西電力が推進してきた。「電気で安全な暮らし」なんてことを言っていたように思うが、これは「ガスという発火性の強いものは危険だ」と、暗に大阪ガスを意識したものであるし、実際電力会社の者が「ガス爆発はないからね(笑)」なんてことを言っていた。それが今回の原発事故で電力不足となり、関東地方では「計画停電」を実施している。「オール電化」はこれに実に相応しくない提案だ。そして今後もこの宣伝をすることは難しいだろう。

福島県に続いて、茨城県産の野菜も放射能の危険があり、出荷どころか摂取制限まで出ている。摂取制限とは、食べるなということである。いま販売されている両県産の野菜もダメだという認識が消費者のなかに広がる。放射能など被っていないものに対してでもそうなる。風評被害ほどわが日本国民にとって大きなものはなく、生産者農家にとって大きな痛手となることは必至だ。「福島県産のものを応援しよう」と昨晩、塩田博が言っていたが同感である。

都内葛飾の金町浄水場から暫定基準値を上回る放射性ヨウ素が検出され、水道水を飲まないように呼びかけているという(3月23日午後3時時点)。遂に都内の水にまで影響が及んできたか。風に乗って到来する放射能と違って、水に溶けてしまうという事態は、この浄水場から配水されている地域の人々にとっては大きな不安であろう。厚労省などはいつものように「(呑んでも)直ちに健康に影響を及ぼす値ではない」と言っているが、誰が生水を飲むものか。

それより僕が心配するのは、こうした積み重ねによって静かなパニックが広がっていくことだ。サイレント・パニックと名付けて前にも日記に書いたが、「計画停電」や「整列乗車」「買い占め」といった大都市でのさまざまな事象に対して、現在人々は従順に従っているように見える。しかしその内面では、かなりの精神的苦痛を感じている筈だ。「取り乱さずに頑張ろう」「被災地に比べたら我々は」「私達が乗り切ることで日本が復活する」という矜持のもとに生きている人々が、度重なる、さまざまなマイナス要素に、いつかパニックを起こすのではないかという観察だ。水道という、これまで安心安全と信じ切ってきたものが危険だという精神的不安は、全く新しい不安であるがゆえに、どのような現象として表出してくるか分からない。何も起こらないかも知れない。それがいいのだが、「東京もダメだ」「どうすればいいんだ」「逃げ出すしか手はないのか」そう感じる人も多いだろう。都内でガソリンの盗難が増加しているというのも、ある種の治安の乱れである。盗んだ者は普段から窃盗する者かも知れないが、そうではない者も含まれているだろうと予測する。

TV放送が通常放送に戻った。これでTVの震災報道を見て精神的な動揺を起こす人が幾分減るだろうと思う。ずっと見続けていると必ずPTSDになってしまう気がしてならない。実際ぼくも妙な焦燥感に襲われそうな気になった。TVを見すぎてはいけない。それが被災地から遠く離れた場所にいる僕の得た教訓だ。
by kazeyashiki | 2011-03-23 15:28 | 暮らし | Comments(0)

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by 上野卓彦