傍聴   

裁判の傍聴席に初めてすわった。
これまで自分が被告になったことは二度ある。
交通違反で罰金刑になったとき、
裁判官と向かい合って判決を言い渡されたのだ。
時間にして数分。「はい」と罪状を認め、ハンコを捺した。
おれの後ろには、同じ被告が列をつくっていた。
内容は、バイクで飲酒運転をしたというものだった。
22歳頃のことだ。
そこは、空港にある両替所みたいな感じだった。
まあ、これも裁判であろう。
だが、今回は"きちんとした法廷"だった。

裁判の内容は飲酒運転による事故。ケガ人が出たものだった。
被告は若い男性。証人は彼の父親だった。
裁判長、書記官、検事、弁護人がいて、
裁判官は、懲役1年程度の裁判なら1人だという。
証人、被告とも証言する際は、真実をいうと宣誓する。
ウソをいえば偽証になると裁判長から念を押される。

弁護人は被告の立場を守るために語り、
検事は被告にいくつもの質問をしながら矛盾点を突く。
刺々しい雰囲気ではなく、劇的でもない、平熱の展開だった。
最後に裁判長が被告にいくつかの質問をして終わった。
検事は懲役1年を求刑し、判決は10日後に出るということだ。

これまで裁判の法廷に何度も出たという友人がいる。
今回と同じような事故であったり、家族や相続問題など、
刑事、民事とさまざまだ。
だが、まったく裁判所というところに無縁の人もいる。
できれば裁判所とは関わりを持ちたくないという人もいるだろう。

だが今回傍聴席にすわり、時間にして40分程度の裁判を見て、
これまでに体験していない種類の感覚を得た。
それは、法律という目に見えない網が、
おれたちの周囲に張りめぐらされているということであり、
網に触れる、網を越えると、起動する装置であるという感じ、
ということだろうか。なかなか興味深かった。
法律には疎く、係わることもなく生きてきたと思うのだが、
しかしまったくの他人事であるとはいえない。
被害者にも加害者にもならないということは断じて言えないのである。

帰路、同行者と夕方前のビールを呑んだ。
なぜか喉がカラカラに渇いていたので生ビールはうまかった。
店では古いロックが流れていた。
なつかしいキング・クリムゾンのナンバー、
"The Court of the Crimson King"だ。
クリムゾン・キングの宮殿と訳されているが、
Courtは、法廷、裁判所という意味があったはず。
たまたまだけど……。



8月20日、
報道ジャーナリストの山本美香さんがシリアで亡くなった。
ご冥福を祈りたい。
合掌。
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by kazeyashiki | 2012-08-21 12:00 | 素描 | Comments(0)

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