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京都、久々

朝から京都へ向かう。久方ぶりである。
このところ大阪周辺を行ったり来たりしていたので、
電車に乗って出かけることが単純に嬉しい。
歩くのもまた楽しい。
京都は歩く町……という固定観念がおれにはある。

午前中、老舗店を切り盛りする女性を取材する。
濃密な2時間。
しかし受け答えが明快で整理されていて、全く疲れない。
つまり、対話が弾む。楽しいのである。
用意した質問事項がさらに磨かれた形になるのを感じる。
こういう時間はいい。

午後からスタッフと打合せをし、その後単独で下見。
古都でもっとも古い花街である上七軒を歩く。
これまで何度も足を運んだおなじみの界隈である。
しかしいくつか複雑な出来事があって、
ここしばらく遠ざかっていた場所だった。

花街は、絶対に宵闇せまってからのものだ。
だから午後の昼光のなかを歩くのは、どうも具合が悪い。
夜なら見えないものが見えてしまう。
昼空に張りつく白い月を眺めるようなものである。
揚げ足りない唐揚げみたいな感じもする(違うか)。
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だが、写真を撮るには昼間がいい。
北野天満宮から上七軒の情景……
しかしこの花街を象徴する団子店は改装中で、
青いビニールシートが被され、内装工事の音と砂煙が上がる。
本番の撮影までに工事は終わるのか心配になる。
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花街のなかを歩きまわると大汗を搔いた。
秋風らしきものが時折吹いてくるとはいえ、やはり暑いは暑い。
千本今出川の交差点まで戻ってきて、喫茶店に入る。
昭和レトロな「珈琲静香」である。
知る人ぞ知る、昭和13年創業の店である。
初めて入ったのは大学1年の時で、
地域の年輩者の方々が集う姿にとても緊張した憶えがある。
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だが今はおれがその年輩者の一人であるから何の緊張もない。
さも馴れた所作でドアを開け、古いソファに腰を下ろす。
「ホットを。ミルク砂糖はいりません」なんて、あーいやだねえ。
お客さんは近所の女性や、ご隠居さん風情の好々爺、
観光でやって来た中年夫婦が物珍しそうに店内を見渡していた。
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やはり京都はいい町だなと思う。

繁華街まで戻ってきて、つい一杯飲みたくなるが、
ここ一週間、まったく飲んでいないので飲みたい虫が騒ぎそうだ。
飲むとだらしなくなるのは必至なので、やめて帰路に着く。
ちょいと一杯のつもりが、
〈そういえばK君の店に久しく行っていないな〉
〈Yさんが小さなカウンターバーを始めたと言ってたな〉
〈M君に連れられて行った店はよかったな〉
などと、一杯目の酒の酔いで発火してしまう傾向が大だ。

[年間を通して煩悩の数だけ酒を飲む]
という決め事をしていたのは新聞社のOさんだが、
おれもそれに習って、月に9日だけ飲むという目標を立てた。
8月31日に飲んだが、9月はまだ飲んでいない。
明日、東京からS君が日帰りで来阪するので、
最終新幹線まで新大阪界隈で飲むことになっている。
それがあるから今日は、というわけだ。

……と、言い訳しながら自分を馴らしているのが恥ずかしい。
by kazeyashiki | 2012-09-06 21:00 | 京都 | Comments(0)

日日是好日

by 上野卓彦