2013年 02月 04日
22年
しかしその後、劇団員であった島田誠彦君、亜己婆、そして音効の苫谷典子さんが鬼籍に入り、これは悲しいことなんだけど、うつむいて酒呑んで想い出を語る……なんてことはこっちの世界、あっちの世界にいる者たちにとって、らしくないというか、似合わない。
そこで彼らを羨ませてしまうようなイベントをやろうと計画していた。どこかのライブハウスなんぞを借りて、語りの会などやろうかなんて話していたところ、劇団後期に劇中歌を作曲してくれていた山崎秀記君が、北山新大宮上ルにある建物を見つけた。「ふじセンター」というかつてスーパーマーケットだったそれなりに大きな建物である。
おれはこの近く、大宮南林町の小薮寮という下宿屋に住んでいた。和田茂樹もいた。当時、このスーパーにかまぼこかなにかを買いに来た憶えがある。
とまあ、そういう場所を山崎君が借りた。店舗だった場所はステージを造るには充分な広さがある。そこで劇団のエンジニア絵所良和(現在は苫谷良和)氏が牽引して、京都のスーパー道具方棟梁である田島邦丸氏が中心となって改装工事がスタートした。「紫竹屋建設」という名前までついた。現在工事が進んでいる。そして6月15日の土曜日にイベント開催が決定したのである。
「朗読会」+「音楽会」+「映像上映」という3本柱で、午後3時から7時までの長時間、お客さんにも来てもらった催事をおこなう。銀色昆虫館の舞台を見たことがある、関わったことがあるという人はぜひお越し願いたいのだが、一観客ではなく、自分もステージに上がりたい、歌いたいということなら、参加して頂きたい。いきなり当日舞台に上がるのがためらわれると思うので、それまでにおこなう稽古に参加してもらっても構わない。
22年ぶりなので、その間いろいろ人生模様も変わっている。仕事中心の生活になっている者もいる。それぞれいまの人生を生きている。そういうなかに「芝居」というイベントが入り込んでくるということは、日常が揺さぶられることであろう。もちろん仕事上でも、新しい仕事になれば揺さぶられることもある。だが、「芝居」や「音楽」といった自分の感性や才能といったものが重要な要素になるものは大変だと思う。なにか根源的なものが揺さぶられるところがあるのだ。軸足の再確認が必要というか、自分に向かい合うことをしっかり見極めないとイカンところがある気がするのだ。なぜならそれだけ芸能は魅力的なのだ。心地よい囁きである。囁いているのは悪魔か天使かわからないが、パッと見たら天使であり、妖精であり、王子様女神様のようだ。ここがミソなのだ。
唐十郎は「(芝居で)いのち棒に振ろう」ってことを言っていたが、芝居に関わると生活がぶるんぶるんと揺さぶられる。社会性や一般性などというものが無効化されてしまうキケンだってある。そういう魔力がある世界なのだ。果たしてどのような展開が待ち受けているのか。
でも、いちばんブレブレになっているのは、おれ自身かもしれないなあ。