冬の旅人は   

弱々しい冬の太陽の下を歩いていると、
遠い日の冬の日を憶い出す。
それは誰もいない古い家の
火の気のない部屋で、
身の置き所もなく、
自分という不思議な存在に
戸惑っては吐息つき、
壁に手を触れては諦め落ち、
さみしい愁いに微笑む小さな人の方へ、
銀の鏡の光射す側へ、
椅子に埋まる記憶の中へ、
還って行きます。
そこは雪の楽園?
風の園?
冷たい薔薇の滴り落ちる結晶世界?
いつか失くしたマフラーが、
君のことを待っていたんだ
という顔して巻きついてくる。
浮かびあがるような冬の旅人は、
思い出せない想い出のために
新しい靴を買いに行く。
あの黄色いともしび灯る茶色い店へ。
曇り硝子のチョッキ親爺のあの店へ。

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by kazeyashiki | 2014-12-06 02:22 | 素描 | Comments(0)

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