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「妖」からの寄り道旅

平凡社新書『白川静入門』(小山鉄郎著)に、非常に興味深い一節がある。それは「夭」という文字だ。

この字は「夭折」や「夭逝」といった若くして死んでしまった者を惜しむように遣われるが、「夭」には、若い巫女さんが神との交信・交感によってエクスタシー状態になって身をくねらせて舞い祈るという意味があるという。で、身をくねらせるゆえに「若い」ということになり、早世となる。また、災いのことを「殀」というので、「夭」にも同じ意味がある。

この「夭」は、「笑」という字にも入っている。

「笑」とは、やはり若い巫女さんが両手を挙げて踊る様のことで、竹かんむりは「両手」を表しているというのだ。舞い踊る若い巫女さんは、神様の意思を和らげるために両手をひらひらさせ、「笑って」神様を楽しませると。さらにこの「笑」という文字は「咲」と関連していて、古代は「咲」と「笑」は同じ文字だったという。「花が咲く」と今は言うが、昔は「花が開く」と言ったようで、「花が咲く」という表現は新しいそうだ。

また、「妖怪」の「妖」の字にも「夭」が入っているが、「妖」の正字は「女へんに、草かんむり、その下に〈夭〉」というもので(辞書にないのです)「笑」の元の字形だとも。「夭」の字は、あでやかな女性の姿を表すことから、「妖艶」や「妖美」などの言葉が生まれた。

原稿を書いていて「妖」の文字がふと出てきて、そのまま横道に逸れてしまうといういつもの寄り道でした。

by kazeyashiki | 2017-04-21 19:31 | 読書 | Comments(0)

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by 上野卓彦