カテゴリ:素描( 25 )   

工事現場の男の横を   

今日、近くのビル建設現場の前を通った時、
建設作業員が働いている中に年老いた男がいた。
ヘルメットに作業ジャンパーはみな同じだが、
白くなって伸びた髪がはみ出したのが見え、顔を見たら老いた男だと分かった。
その男は、若い、といっても四十を超えた恰幅のいい男から注意を受けていた。
老いた男は両手に、ビルの床に張り付けるためのものなのか、
30㎝角のタイルを何枚も載せて運んでいる最中だった。
四十の男は怒気は含んではいないが、励ますという感じではなく、
叱っているのでもなく、老いた男にぶっきらぼうに言葉を投げかけていた。
男は顔をしかめ、小股で四十男の後をついていく。
両手のタイルを家宝の大皿を運ぶような腰つきで。
働くことは苦しい。これまでの経験など何も通用しない現場ばかりだ。
まして年を取れば、仕方なしに雇われている現実を押し付けられる。
しかし働かなくてはならない現実もある。
それを不運というか、努力不足と呼ぶかは知らない。
若い頃のツケが回ってきたからだとも言うかもしれない。
だが、老いた男よ、体が動くならあなたは働こうとするだろう。
なぜかそう思う。
通り過ぎただけの者が余計なことを言うが、
あなたの横を通り過ぎていった10秒か15秒の間に長い年月が過ぎた。
死ぬまで働くと言った言葉をあなたは死ぬまで繰り返すだろう。
それがこの世の幸福ならと笑ってあきらめて。

[PR]

by kazeyashiki | 2017-03-01 01:49 | 素描 | Comments(2)

おかしな夢   

 標高600mくらいのところにある小さな神社を調査するため山路を歩いている。長らく人の手が入っていない社と聞いていたが、石段下まで来て見上げると、鳥居も掃き清められた石段の上に建つ社も光を浴びてキラキラ輝き、その中を幾人もの神職者や作業服を着た地元の者達が行き来している。「これは……調査の必要はありませんかも」と同行者が言う。


 すると別の者が地図を広げ、「この近くに白い建物の、神社とも寺院とも呼べない原初的な遺構があるなぁ」と言う。地図に描かれているのは、井戸を示す印である。ともかく向おうと歩き出した。


 途中、顎の尖がったやくざな男が塩っぱい声で「あすこへ行くには儂に支払うもん支払え」と喧しかったが、白紐で囲われた区域から外へ出てくることはないので我々の行く手を阻むことはなく、通り抜けることができた。


 やがて遺構が見えてきた。たしかに井戸のように見えるが、遺構とは思えないほどの純白さで、底を覗き込んだ者によると「鏡のように磨かれた水面が見えました」などと言う。調査隊は役目の終了を感じ、退散することになった。


 私は、木造二階建ての軒並みが続く古びた商店街を物見遊山しながら歩いていたが、見慣れた建物が視界に入ってきた。露天風呂や薬湯、電気風呂などの派手な看板を掲げた風呂屋で、その裏手に私は間借りして住んでいる。一旦部屋に戻るか、そのまま湯に浸かるか一瞬迷い、立ち止まっている時に目がさめた。


 別段、何ということもない夢だが、寝覚めはそこそこ爽快だった。


[PR]

by kazeyashiki | 2017-02-25 16:59 | 素描 | Comments(0)

冬の旅人は   

弱々しい冬の太陽の下を歩いていると、
遠い日の冬の日を憶い出す。
それは誰もいない古い家の
火の気のない部屋で、
身の置き所もなく、
自分という不思議な存在に
戸惑っては吐息つき、
壁に手を触れては諦め落ち、
さみしい愁いに微笑む小さな人の方へ、
銀の鏡の光射す側へ、
椅子に埋まる記憶の中へ、
還って行きます。
そこは雪の楽園?
風の園?
冷たい薔薇の滴り落ちる結晶世界?
いつか失くしたマフラーが、
君のことを待っていたんだ
という顔して巻きついてくる。
浮かびあがるような冬の旅人は、
思い出せない想い出のために
新しい靴を買いに行く。
あの黄色いともしび灯る茶色い店へ。
曇り硝子のチョッキ親爺のあの店へ。

[PR]

by kazeyashiki | 2014-12-06 02:22 | 素描 | Comments(0)

墓参   

おびただしい記憶の集積地
である墓地を歩くのは
なぜか気持ちが安らぐ
風薫る春の午後
だからというわけでもなさそうだ
列んだ墓石はやはり家々であり
墓地は街
鳥と蝶たち
そして撒き石の下にマルムシ
むかし憶えた唄を口ずさんでみる
a0193496_14164978.jpg

[PR]

by kazeyashiki | 2013-04-14 14:18 | 素描 | Comments(0)

関山   

ヤエザクラは八重咲きになる桜の総称なんだそうです。

a0193496_16405027.jpg


そして写真のは、関山と書いてカンザン。
母の通院途中、車いすを押しながら行くと、
豊中の桜塚界隈に〈はにわロード〉という道があり、
そこでこのヤエザクラが咲きほこっていました。

古墳が数多くある地域だから〈はにわロード〉。
ロードじゃなく、街道とかにしてほしいね。

座っていた母が声をあげたのは言うまでもありません。

a0193496_16417100.jpg


そして今日は父の命日。
2004年のこの日は、白い桜の花が満開だった。
亡くなった病室の窓から風に揺れる桜を眺めた記憶がある。
遠い日の夢のような風景として今も残っている。
[PR]

by kazeyashiki | 2013-04-10 16:42 | 素描 | Comments(0)

静水   

静かに
ひたひたと
いまも流れ出している

沁み込み
解けて
深く
おびただしく
決して浄化されることのない
反自然の

生物であるこの地球の細胞に
ウィルスが拡がっていく
物憂く足下を
見るしかないのだろうか

a0193496_16291928.jpg

[PR]

by kazeyashiki | 2013-04-08 16:30 | 素描 | Comments(0)

  

Talkin' to myself and feelin' old……
Rainy days and Mondays always get me down.

と、若くてきれいなカレンは歌っていたけど、
春の予感のしない冷たい雨の月曜日は、
やはり憂鬱なものだと感じる人が多いかもしれない。

今から奈良へいく。
雨が降っていると、遠く感じてしまうなあ。
a0193496_13325048.jpg

寒いのにも飽きて来てしまう。
一昨日手紙を出した、焼肉店豊楽のおばちゃん、
どうしているかな。元気でいてほしい。

あさって、京都にいくときは晴れてほしいね。
[PR]

by kazeyashiki | 2013-02-18 13:33 | 素描 | Comments(0)

恋の奴隷   

女   お仕事、進んでまして?
男   ……………。
女   雨の日は何かと想い出すことが多すぎて、
    畳に染みついたお醤油のシミを見ても何だか胸せつなく、
    むかしのことをつらつらと思い起こしてしまいます。
男   むかし?
女   ええ、私がまだ産まれる前のこの辺りのことや、
    家のまえを通りすぎていく人のお顔など、知りもせぬのに、雨のせいで、
    浮かんでは消え、消えては浮かぶ……そんなことをくりかえしております。
男   ふしぎなことを言うやつだ。
女   墨をお摺しましょうか?横着をして唾(つばき)で摺ったりなんかしては、
    せっかくの小説が何なら匂って来そうで……(と、水差しを取りに行き、戻ってきて)
女   今度の作品はどういったものか、私に聞かせていただけますか?
男   ふむ。なかなか難儀をしておる。
女   難儀な恋ゆえ燃え上がりますように、
    難儀な小説ゆえ、読むお方もお喜びになるのではありませんか。
男   (笑って)そう簡単にはいかんがな。
女   テエマは何でしょう?
男   ほう、テエマと来たか。えらく硬くでたな。今回は恋がテエマじゃ。
女   恋?争いごとでございますね。
男   ほう、恋は争いごとか?
女   恋が本当に恋らしく思えますのは、世が乱れ、
    ひと様の心がすさんでいるときの方が美しくあるようで、
    そのなかに一輪、咲かせる花こそまことの花ではないかと……
男   (笑って)男にはそこまでの余裕はないな。
    乱世なら乱世を如何に征くべきか、そちらの方に傾くものよ。
女   そこが女の恋の導火線。平静なる世の中など、男を骨抜きにするだけでございます。
    嗚呼、平静さなど男も女もダメにさせるだけのもの、ちっとも面白くありませんわ!
男   (笑って)まあ、おなごならそう思うだろうなあ。
女   ねえ、ちょいと読ませていただきたいわ!(と、原稿の束を奪い取る)
男   こらこら、よさんか!
女   (小走りに男から遠のいて原稿を見て)恋の、奴隷!?

その途端、奥村チ歌う「恋の奴隷」が流れ出す。
[PR]

by kazeyashiki | 2013-02-14 17:20 | 素描 | Comments(0)

もの思う朝   



つめたい雨が降っている。
東京は雪だとテレビが伝えている。
今日は、大阪でイベントの設営を手伝い、
その後、京都へ移動する。
編集室で構成の打合せを夜まで。

雪が降ることで大騒ぎする東京のメディアが面白い。
こういうローカル情報は全国の人に必要ないんだが。
東京都の○○区くらいの広さとか人口と同じです……
といういい方をするアナウンサーがいる。
こういう比喩表現はやめた方がいい。
分からないものね。
とくにNHKの鶴瓶さんの番組の女性アナが、
こうしたいい方をよくする。さっぱり実感がない。



丸坊主にしたアイドルの女の子。
囚人の印象がおれにはあったのだが、
あれは丸刈りがあまりに下手だからという指摘があった。
納得。
アイドルは、ああいうことをしてはいけません。
すくなくとも、アイドルは「花」です。
丸刈り……教育の問題なのかなあ。
とすれば、事務所のレベルが低いんではないか。
育て方も、丸刈りの技術も。

Youtubeに流れたアイドルの映像、
あそこにNHKの「映像の世紀」テーマ曲、
「パリは燃えているか」をかぶせると、
収容所に送られる情景に見えてしまう。
こういうことは不謹慎だとは思うのであるが。



中国のレーダー照射による挑発。浅はかなことだと思う。
こうした愚者のせいで世界が悪くなる。
歴史の上ではたまにあることだ。

最近あまり報道されない(得ていない自分のせいでもあるが)が、
チベットの問題はどうなっているのか。
尖閣諸島を巻き込んでいうつもりはないが、
チベットの独立という言葉を口にすると、
やはりこれも挑発になるだろう。
しかし抗議の焼身自殺が後を絶たない状況を、
我々はもっと注視するべきだと思う。



柔道連盟の元理事さん。
ぜひとも北野武の映画に起用してほしいなあ。



朝のワイドショーを見ながら思ったことでした。
[PR]

by kazeyashiki | 2013-02-06 10:25 | 素描 | Comments(0)

大坂浪花不在鏡   

新年になってから、大阪で撮影した記憶がない。
「母が来た!」は特別で、それ以外は大阪が欠落している。
中央区に住んでいるくせに、
大阪にいないというのはどういうわけだ。
仕事でも大阪で、というのがないのである。

京都に関係する番組を制作しているから、
京都での撮影が多い。
次に滋賀、奈良となる。
和歌山、兵庫には今年になって出かけておらん。
尼崎までは行きましたが。

ということで、また写真ばかりの日記となりました。

☆ 

安土城址は、いつ行っても気持ちが晴れ晴れとする。
天気も、いつもいい。そして、人がいない。
a0193496_1745143.jpg


秘密の場所といえば、吉田山の竹中稲荷神社。
京大生ならよく知っているかもしれないけど。
a0193496_17124192.jpg


湖北の名も無き小駅(名前はあるけど)を、
電気機関車に牽かれた貨物列車が通過していく。
こういう風景、好きだ。
横光利一の一節を思い出すね。
「真昼である。
 特別急行列車は満員のまま全速力で馳けてゐた。
 沿線の小駅は石のやうに黙殺された。」
a0193496_16561460.jpg


西陣界隈をアテもなく散歩していたら出会った小学校。
すでに廃校になっている。
子どもたちの声が聞こえない学校はさみしいね。
a0193496_16583355.jpg


宇治はこれまであまり縁のある地ではなかったのだが、
番組撮影で出かけ、町を覆う色彩に心が落ち着く。
京都市内と比べて、時代が動いていない感じがするなあ。
a0193496_16585259.jpg


京の奥座敷のひとつである清滝。
夏と冬に都人が愛宕山に詣でたのは昔日のこと。
一時は鉄路も敷かれていたというのに、今は寂寞感が漂っている。
かつては多くの茶店が軒を連ねていた。
嵐山への観光客もここまではなかなかやって来ない。
a0193496_1751871.jpg


愛宕街道を嵐山にむかって下っていくと、
テレビCMなどでお馴染みの竹林の小径がある。
嵯峨野といえば竹林なんだね。
a0193496_1754020.jpg


そして嵐山。
どうしても渡月橋が有名なのだけれど、
おれは中ノ島に架かるこの太鼓橋が好きである。
時代劇にもちょくちょく登場しますね。
ふだんは、地元の方々がこの橋を渡って阪急の駅へいそぎます。
a0193496_1761350.jpg


ところかわって、ここは奈良・三輪の高台から見た大和三山。
昨年の正月にもここからの写真をFacebookにアップした。
百人一首の世界であります。
左手から、天の香具山、畝傍山、耳成山で、
背後には葛城山、金剛山の山なみが連なっている。
持統天皇の歌に誘われて、春から夏に変わる頃にも出かけたいな。
「春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山」
大和はいいなあ。
a0193496_1763883.jpg


奈良を誉めた口で、すぐまた平安京誉めをするのは節操がないが、
雪を残した大原、寂光院。
数年前に全焼して新しく建立されてはいるけれど、
山里のさらに奥に、ひっそりと佇む様はすばらしい。
平清盛の娘・建礼門院が隠れ棲み、
後白河法皇が訪ねた話は『平家物語』でありました。
a0193496_177616.jpg


隠れ棲んでいるわけではないが、
劇団時代の作曲家山崎秀記が見つけた「ふじセンター」。
かつては数軒の食品店が入居するマーケットだったが、
今は鶏肉屋だけを残す廃虚と化していた。
ここを借り受けて、紫竹屋建設が大改造し、
6月に銀色昆虫館がイベントをおこなうことになったのだ。
これはとてもいいことなのだ。みんな来るのだ。
a0193496_1772646.jpg


そして今日、奈良に出かけた。
撮影が終わって公園内で珈琲なんぞを飲んでいると、視線を感じた。
ジーーッと見つめるのですね鹿くんは。
a0193496_17121324.jpg




ということで、大阪で撮影した写真がちっともない。
狭い近畿圏の、そのまた狭い範囲を行ったり来たりしているわけで、
やはり兵庫や和歌山、それに淡路島や日本海にも出かけたいものです。

ま、これからですね。
[PR]

by kazeyashiki | 2013-01-23 17:16 | 素描 | Comments(0)