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バベル   

仕事帰り、図書館について調べるために図書館へ行く。
週明け月曜日は休館日だが、
親切な司書が開けてくれたので、無人の自習室で何冊もの本を広げることができた。

「図書館は、」と私は書き写しはじめた。
「その厳密な中心が任意の六角形であり、」
と、ここまで写したらノートの余白がなくなった。

司書をさがしたが見あたらず、
数十台並んだ図書検索システムのPCのうち1台だけがモニター発光しているので、
そこに書き写そうと近寄っていくと、さきほどの司書がその画面のなかにいて、
「何か御用がございますか?」と目を伏せたまま言う。
「いいえ、ありません」と席に戻り、
続き部分を左手(私は右手が利き手で、ペンは右手に持つ)に写すことにした。

「その円周は到達の不可能な球体である。」
何とか皮膚に書き込むことができた。
インクが皺に滲んだが読解不能という事態にはならなかった。

「図書館は、その厳密な中心が任意の六角形であり、その円周は到達の不可能な球体である。」

書き終えると疲労が急速に襲ってきて、私は帰ることにした。
司書にその旨を伝えようとしたがモニターは暗色に沈んでいた。
回転ドアを出て、すでに夜の闇が降りてきている建物を見上げると、
上階は雲に隠れて見えなかった。
「バベルだ」
と私は思わずささやいてしまった。
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by kazeyashiki | 2012-03-26 00:00 | 世界 | Comments(0)

歌と、クルマと、ある会社   

朝起きると、聴きたい歌があることに気づいた。
「聴きたいよー」と、心のどこかから訴えかけてくる。
こういうことは、しばしばある。

Mountainというロックバンドの、
"Theme for an Imaginary Western"という歌だ。
スローテンポのメロディアスなナンバーで、懐かしい。
数年前に亡くなった旧友Sが好きだったMountain。
おそらく初めて聴いたのは、彼の家〜川西の山下駅前の〜だった。

なにかの暗示?
たぶん違うだろう。

youtubeやiTunesでこの歌をさがして、聴く。
気持ちがおだやかになった。



ダットサン、という名称が甦るとテレビのワイドショーが告げている。
こちらも、懐かしい。
ダットサンといえば、ブルーバードやトラックだとテレビは言うが、
おれにとってダットサンは、ツートーンカラーのクルマが印象深い。
憶えているひとはいるだろうか。
このクルマのことについて、ずいぶん前にこんな一文を書いた。

………

幼い頃、長い坂道をぼんやり登っていたら、
坂の上からツートーンカラーのダットサンが静かに下って来たのを見た。
日の光が木々の枝葉からこぼれ落ち、そのクルマの車体をキラキラと輝かせていた。
「ああ、きれいやな」
おれは生まれて初めてクルマという工業製品を美しいと思った。
ゆっくりとブレーキをかけながらおれの横を通過していくダットサン。
もっこりとした車体が坂を下っていく。
思わず見とれた。
今思えば、映画のワンシーンのように感じていたのだろう。
だが、おれの目の前まで来たときにクラクションを鳴らされた。
驚いて身を引いた。
運転しているのは女性だった。
顔がひきつっていた。
免許を取ったばかりだったのかも知れない。
(2007年4月15日記)

………

ニューダットサンは新興国向けに販売されるらしい。
その容姿を見てみたい。



東京電力が電気代値上げの策に、
隠しごとめいたことをしていたと報道している。
契約期まで料金値上げを延期できるものを、
来月4月1日付で通告してきたのだという。
実際は契約期から値上げを受け入れていいということなのに、
その説明をしなかった。
こういうのを「姑息」というんだろうな。
「因循姑息」ともいう。
何だか情けない会社だなと思う。



さて、今から出かけよう。
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by kazeyashiki | 2012-03-22 07:00 | 暮らし | Comments(0)

野に、球。宵に、酔。   

朝から撮影の3月19日月曜日。
よく晴れている。
午前8時30分までに大阪南部にあるグランドへ。
……行く予定だったが、直前になって変更。
10時半現場着になって、
カメラマンとおれはファミリーレストランで朝食にありつく。
ファミレスはロケのときくらいしか入らない。
しかも朝の時間帯はかなりマレだ。
店内には数組と、単独者も数名で、ゆっくりとした時間が流れている。
小声でしゃべる人たち、何紙も新聞を読むひと、
ケータイを見つめているひと、いろいろだ。
朝食を優雅に食べに来るひと、というのがいるんだね。

グランドではすでに球児たちがそれぞれ練習をしている。
ある高校の、野球部の練習試合が撮影対象だ。
学校案内に使う映像で、野球部はそれなりに強い。
甲子園出場もしている高校だが、今春の選抜はダメだった。
だが、練習試合の相手チームは選抜出場のチームだ。
近在の野球好き親爺たちも集まって来ている。
生徒の母親たちが甲斐甲斐しく動き回わり、
おれたちにまで、温かいレモネードを配ってくれる。

間近で野球を見るのは面白い。迫力がある。
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野球は小学生までよくやったが、投も打も守もうまくなかった。
プロ野球もあまり興味がなく、
南海ホークスの試合をなんば球場へ何度か観戦にいった程度、
甲子園には、兵庫県の地区予選などで使われていたので、
塩谷君と一緒に行ったりした。
野球にはその程度の関わりしかない。

練習試合とはいえ、ゲームは白熱した。
そして、撮影はうまくいった。

午後2時。
カメラマンの希望で「福島上等カレー」に行く。
カレーうどんの「得正」が経営しているカレーショップだ。
カツカレーが、うまい。

午後3時には仕事が終わった。
プロダクションのある大国町から難波まで歩き、
地下鉄で淀屋橋。
知り合いのギャラリーに立ち寄って珈琲をご馳走になる。
草間彌生展のチケットをもらう。

淀屋橋から肥後橋へ。
fat氏がマッチャンとMA作業をしているというスタジオへ。
久々に歩く肥後橋界隈。北京料理の徐園の門もちゃんとあった。

マッチャンの父上が救急車で入院したという。
立って歩けないほど弱っているそうだ。
3人で軽く立ち飲みという計画だったが、残念。
久々に西天満一座の話ができるかと思ったのだが。

だが、飲みに行くのをやめるものではない。
fat氏と北新地のなかにある、酒と食事処へいく。
まだ5時半だ。
だが、女将は入れてくれた。
明日が祝日なので今夜は全席予約だというが、
午後7時までなら大丈夫と、カウンター席に坐れたのだった。

fat氏は今月、猛烈なるいそがしさのなかにいる。
5〜6本の映像制作が同時進行しているのではあるまいか。
その指令をすべて出しているのだから、多忙さは以て知るべし。
端で見ているだけでも慌ただしい。
fat氏のテンションは相当な数値を示していると感じられた。
入ってくる電話に丁寧に対応しているが、
それは苛立ちをコーティングするための過剰な丁寧さのようで、
電話を切ると、噴出するように思いが吐露される。
言葉遣いも見事にターンオーバー。

店はしばらく前からなじみの店で、
われわれよりすこし年配の女将が作る手料理がとてもうまい。
薄あじで、材料も素朴なものが多く、しかも安い。
「若ごぼうと青菜と薄揚げの煮びたし」や、
「じゃがいも、人参、いんげんの牛肉包み煮」、
熊本から取り寄せた「もろみ豆腐」(山雲丹と呼ばれている)、
そして特製「茶碗蒸し」を、〆にいただく。
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仕事でハイテンションになっていたfat氏だが、
やさしき味をその身に入れていくにつれ、穏やかになってきた。
仕事の話はそこそこに、社会の話、政治の話もそれなりに。
だけど、いちばんオモシロイのが悪口だ。
友人知人の悪口を言いながら飲む酒のうまいこと、進むこと!
「何が○○じゃ!どのツラさげて言うとんじゃ」
「しょうもないことを延々と喋り続けよるやろ、アイツ!」
「邪魔くさいこと言うなちゅうねん!」
もう自分のまわりの者は、右も左もやっつけろ状態である。

悪口陰口をいうのはよくない、という倫理的教育をぼくらは受けてきた。
決して、潔いことではない。
だが、悪口をいうためにはそれ相当の観察力、洞察力が必要だ。
「うまい悪口」というのもヘンだけど、膝を打つ悪口、
まさにその通り、うまいこと言うなあってやつがある。
「うまい悪口」には創造性や感受性が必要、センスの問題ですね。
そして、悪口から始まるもうひとつの評価もあるだろう。
もしかしたら、クリエイティブな作業であるかもしれない。

fat氏の話には、爆笑させてもらいました。

酩酊の宵、午後7時前の中年男2人組は梯子酒を目論んでいて、
「とにかく酔いたい」という分かりやすい課題を達成するためには、
口から酒精分の多い液体を流し込んでいけばいい。
するとたいがいの人間は足許がふらつき、態度がゆるみ、声が大きくなる。
われわれもそうなりました。
西梅田のオーセンティックなbarで日本のウィスキーを4種類ずつやり、
すっかり目がつり上がり、気がつけば、まわりはカップルばかり。
仕方がないのでアフターアワーズに移動して、マスターにからみつく。
来店した美しき女神か悪魔か知らぬご婦人方との昔ばなしに花が咲く。
若き日の、酔った挙げ句の合体願望話はどこにでもあるものだが、
そのディティールの一端をいま聞くのは、なかなか青春的で楽しいものだ。

そんなふうにして夜が更け、気がつけば疲れ果ててアゴが出ている。
タクシーを呼びとめ、谷町経由で香芝までfat氏は帰還された。

翌日メールが届く。
「昨晩は完全にメルトダウン」
だけど、明日があるんだ。
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by kazeyashiki | 2012-03-20 18:00 | 暮らし | Comments(0)

吉本隆明氏   

18歳のとき、下宿には何人かの先輩学生がいて、
彼らの書棚に並んでいたのが吉本隆明の全集の一部だった。

その背表紙を見て、全くこれまで知らない人物だったので、
どういう人物なのかを質問すると、
いくつもの答えが返ってきて、いずれもが難解で、バラバラだった。

何度聞いても分からないので、本を借りることにした。

……読みはじめて。

さっぱり分からなかった。
文章が硬く、回りくどく、複雑で、ちっとも理解できない。
おれはアホなのだと思った。

さっさと諦め、京一会館へ向かった。逃げるように。

「リュウメイが」
と、先輩たちは氏のことを発語した。
夜中、酒を呑みながら話していると、やはり吉本氏の話になる。
諦めた自分としては、聞いているだけだった。

「詩人でもある」
と教えられて、古本屋で思潮社の詩集を買った。

 ぼくが真実を口にすると
 ほとんど全世界を凍らせるだろうという妄想によつて
 ぼくは廃人であるそうだ

ちょっと飲みこめた気がしてきた。
鮎川信夫や三好豊一郎、田村隆一の詩の世界から遠くはない、
生意気にもそんなふうに思った。

だが、あいかわらず評論などには手が出せなかった。
そしてそれは今もつづいている。

氏は1924年生まれ、わが父と同じ子年だ。
そうか。
87歳なのか。

本棚に文庫本があった。
ほとんど読まずに古くなった文庫本だ。
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by kazeyashiki | 2012-03-16 09:00 | 読書 | Comments(0)

春よ、来い。   

このところ原稿仕事でこもっている。
酒を飲みに行ったり、外で珈琲を飲んだりはしているが、
基本、家のデスク前に座っている時間が長い。



するといろいろなことを考える。



今朝、また茨城福島付近で地震があった。
昨日も速報が出たので、活発化している印象がある。
阪神淡路のときも、日本各地で地震が発生していたことを思い出す。
しかし、まさか阪神間で地震が起こるとは思っていなかった。
日本列島全体が地震と濃密な関係があるということだろう。



東京で積雪があったことを喧しく伝えていた。
そして東京スカイツリーが完成したとも。
おれはどうもこの巨大な電波塔が好きになれない。
世界一の高さを誇ることや、地域振興などもあるだろうし、
新しい名所として人気が集まるのは結構なことだが、
おれはあのタワーの形状に好感を持てない。
建設中、何度かその姿を眺め、写真に撮ったりもしたが、
何より「エレガントさ」がない。
あの高さだからああした風姿になるんだとは思うものの、
東京タワーのエレガントさの欠片もない気がする。



このところ、歯が痛い。
しばらく歯科医に出かけていないせいだろう。
ぼんやりとした痛みが下顎あたりにあって、
長く続くと頭痛になる。
集中力が欠けるし、食欲も失せる。
痩せていいじゃないか、というかもしれないが、
痛みはいかんともし難い。
市販の鎮痛剤を適量の半分だけ服用している。



関西テレビの山本浩之アナが東北各地から中継している。
その内容の充実ぶりに、
これがヤマヒロさんがやりたかったことなんだと納得する。
震災直後から「東北に行きたい」と言っていたが、
会社が認めてくれなかったそうだ。
しかし昨年暮れに再度会社に行きたい旨を伝えたところ、
あっさりとOKが出たという。
ヤマヒロさんが現地にいる間にぜひとも出かけたいと計画しているのだが、
なかなか都合が合わず、もやもや、もたもたしている。
歯痛の原因もこういうところにあるのかなあ。



歯が痛くてもそれなりに腹が減る。
昼飯を作った。
作ったのは正しくないなあ。
ぷよねこ氏からもらった「いかなごの釘煮」は嬉しい旬の味。
ヨメ作り置きの「白菜と薄揚げの煮物」、
そして、食べなければ余ってしまう卵を目玉焼きにして、
宮城県登米のひとめぼれのご飯。
どれもおいしく頂きました。
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BGMは、"ヤマヒロのアナPod Cafe"
http://www.ktv.jp/podcast/



今日から3月だ。
春よ、はやく来い。
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by kazeyashiki | 2012-03-01 13:00 | 暮らし | Comments(0)