昔人語りき   

京都は町の辻々に地蔵さんが沢山あるが、見てゐると子供達が前を通り過ぐる度にペコリと頭を下げてゆく。観光で名所旧蹟を訪ぬるも好いが、路の縁に佇みて微細に動く影絵芝居のやうな情景を眺むるのも旅の醍醐味ではあるまいか。
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# by kazeyashiki | 2017-03-07 07:10 | 京都 | Comments(0)

工事現場の男の横を   

今日、近くのビル建設現場の前を通った時、
建設作業員が働いている中に年老いた男がいた。
ヘルメットに作業ジャンパーはみな同じだが、
白くなって伸びた髪がはみ出したのが見え、顔を見たら老いた男だと分かった。
その男は、若い、といっても四十を超えた恰幅のいい男から注意を受けていた。
老いた男は両手に、ビルの床に張り付けるためのものなのか、
30㎝角のタイルを何枚も載せて運んでいる最中だった。
四十の男は怒気は含んではいないが、励ますという感じではなく、
叱っているのでもなく、老いた男にぶっきらぼうに言葉を投げかけていた。
男は顔をしかめ、小股で四十男の後をついていく。
両手のタイルを家宝の大皿を運ぶような腰つきで。
働くことは苦しい。これまでの経験など何も通用しない現場ばかりだ。
まして年を取れば、仕方なしに雇われている現実を押し付けられる。
しかし働かなくてはならない現実もある。
それを不運というか、努力不足と呼ぶかは知らない。
若い頃のツケが回ってきたからだとも言うかもしれない。
だが、老いた男よ、体が動くならあなたは働こうとするだろう。
なぜかそう思う。
通り過ぎただけの者が余計なことを言うが、
あなたの横を通り過ぎていった10秒か15秒の間に長い年月が過ぎた。
死ぬまで働くと言った言葉をあなたは死ぬまで繰り返すだろう。
それがこの世の幸福ならと笑ってあきらめて。

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# by kazeyashiki | 2017-03-01 01:49 | 素描 | Comments(2)

おかしな夢   

 標高600mくらいのところにある小さな神社を調査するため山路を歩いている。長らく人の手が入っていない社と聞いていたが、石段下まで来て見上げると、鳥居も掃き清められた石段の上に建つ社も光を浴びてキラキラ輝き、その中を幾人もの神職者や作業服を着た地元の者達が行き来している。「これは……調査の必要はありませんかも」と同行者が言う。


 すると別の者が地図を広げ、「この近くに白い建物の、神社とも寺院とも呼べない原初的な遺構があるなぁ」と言う。地図に描かれているのは、井戸を示す印である。ともかく向おうと歩き出した。


 途中、顎の尖がったやくざな男が塩っぱい声で「あすこへ行くには儂に支払うもん支払え」と喧しかったが、白紐で囲われた区域から外へ出てくることはないので我々の行く手を阻むことはなく、通り抜けることができた。


 やがて遺構が見えてきた。たしかに井戸のように見えるが、遺構とは思えないほどの純白さで、底を覗き込んだ者によると「鏡のように磨かれた水面が見えました」などと言う。調査隊は役目の終了を感じ、退散することになった。


 私は、木造二階建ての軒並みが続く古びた商店街を物見遊山しながら歩いていたが、見慣れた建物が視界に入ってきた。露天風呂や薬湯、電気風呂などの派手な看板を掲げた風呂屋で、その裏手に私は間借りして住んでいる。一旦部屋に戻るか、そのまま湯に浸かるか一瞬迷い、立ち止まっている時に目がさめた。


 別段、何ということもない夢だが、寝覚めはそこそこ爽快だった。


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# by kazeyashiki | 2017-02-25 16:59 | 素描 | Comments(0)

記憶の町へ   

大洲に出掛けたのはいつの頃だったろう。まだ学生で、大学紹介のアルバイト、寺院本堂に装飾を備えつけに、仏具店社員の男運転のバンで朝から国道を走り続けて夕方に到着した。

翌朝、宿から城が見えたのをかすかに憶えている。ただ、この写真の天守はまだなく、石垣の上に小さな櫓があっただけだった。大洲の町では、しばらくまえに撮影された寅さん映画の話をくりかえし聞いた。

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寺で脚立に乗り重くてきらびやかな装飾を支え持ち、終わって大洲から宇和島へ走り、午後いっぱい宇和島の町をうろついた。宇和島城の近くの高校のクラブ活動を眺めたりした。

夕方になり、社員に指定された居酒屋に行き梅錦と大皿の塩エビを食べ、酩酊した。居酒屋大将がブルース好きでウエストロードを流し続けた。その仏具店の子息がベース奏者だったから。

帰りがけ、大将は梅錦一升瓶を土産に持たせてくれた。今まだあの店はあるのだろうか。和風の居酒屋の壁に貼られた憂歌団と白桃房のポスターを憶えている。

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# by kazeyashiki | 2016-12-16 23:54 | 記憶 | Comments(0)

ジョン、あなたの国は今……   

空の彼方から、どんなふうに見ているんだろう。
そのままなら76歳だね。
マインドゲーム以降、もうあなたは英国には興味ない?
でも、Yokoさんは心痛めているだろう。
あなただって、それなら揺れるんじゃないか。
世界はあれこれつべこべ言いつづけて、
いつまでたってもchangeしないよ。
たぶんあなたのいた1980年のNYCのままで、
今ここに来たらあなたは呆れてしまうだろう。
ディランは新しい歌をうたっているよ。
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# by kazeyashiki | 2016-06-17 21:36 | Comments(2)