人気ブログランキング | 話題のタグを見る

すぎやまこういちさん

朝、「題名のない音楽会」にすぎやまこういち氏が出演していた。
御年80歳、傘寿だという。カクシャクとして、実に元気だ。

このひとの作曲した歌はわれわれの音的土壌にしっかり植え付けられているなあ。
番組では、「恋のフーガ」「亜麻色の髪の乙女」「学生街の喫茶店」が演奏されたが、
「恋のフーガ」にはちょっと遅れた感があるものの、
次の2曲はリリースされてヒットした時期をライブ感覚で憶えている。
「花の首飾り」は、まだ小学生の頃だったと思うが、流れていたのを記憶している。

ザ・タイガース「花の首飾り」/ガロ「学生街の喫茶店」
すぎやまこういちさん_a0193496_1175348.jpg

すぎやまこういちさん_a0193496_1181669.jpg


しかしこの作曲家の最大の注目すべき点は、ゲーム音楽「ドラゴンクエスト」である。
「DQⅠ」が発売されたのは1986年で、すぎやま氏は50代半ば。
もともとゲームには関心があって、すぐに飛びついたとどこかで語っていた。
そして「DQ」はゲームとして大ヒットし、その音楽もゲーマーの耳に接着した。
まさに「接着」であると思う。
ゲーム音楽というのは通常の音楽と異なり、何度もくりかえし聴く。
ゲームをする限り、何度もその旋律がくりかえされるのだから、
聴いて憶えるなんてもんじゃなくて、身体に「接着する」感覚で記憶される。
ということは、貧相な旋律ではすぐに飽きられ、倦怠してしまうものなのだ。

ドラゴンクエストⅢ……このCDを持っている
すぎやまこういちさん_a0193496_1184192.jpg


だが、「DQⅠ」から続くシリーズは、ゲームとしていずれも大ヒットした。
もちろんゲームとしての面白さ、奥深さもあるが、音楽的要素も大きい。
ゲームの場面が進むたびに新しい旋律が流れてくるが、
テーマとなる楽曲は、編曲の違いはあれ、基本的に変わらない。
すぎやま氏の音楽的教養の深さがなせる技であるとしか言いようがない。

ぼくは「DQ」のシリーズⅡあたりからやりはじめたが、
今もゲームのなかで流れていた楽曲を口ずさむことができる。
これはヒット曲を歌えるという感覚と似ていて、すこし違う感触がある。
歌ではなく、インストであるという点もあるし、電子音というのもあるが、
ゲームの持つ世界像、構図のなかに自分が入り込んでいるために、
世間で流行するヒット曲よりもさらに親和感があるというのが正しいのだろうか、
ゲームの世界の住人として口ずさむ、土着の音楽という気がする。
へんな言い方だが、ドラゴンクエスト共和国の国民になった自分が、
その国の愛唱歌を憶えているという感覚がある。流行歌とは全く違うベクトルなのだ。

すぎやま氏は東京大学教育学部を卒業しているが、
音楽大学に進みたかったと語っていた。だが、音大の入試には必ずピアノ演奏があり、
氏はそれができなかったのだという。これにはちょっと驚いた。

また、番組で生まれて初めてベートーヴェンの「運命」の例の有名なモチーフ、
あの「じゃじゃじゃじゃーん!」という部分だけを指揮し、非常に喜んでいた。
高校時代からベートーヴェンが好きだったようで、「田園」が好きだったとか。
何となく分かる気がする。

カラヤン指揮・ベートーヴェン交響曲第5番「運命」
すぎやまこういちさん_a0193496_119950.jpg


「DQ」の音楽のなかには、ベートーヴェンを彷彿とさせる旋律があるように思う。
交響曲はもちろんのこと、弦楽四重奏やピアノ曲などの影響も大きいのではないか。
ベートーヴェンの弦楽四重奏はよく聴いていて、とてもいい。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲……ズスケ・クワルテットのものが好きだ
すぎやまこういちさん_a0193496_1193834.jpg


どうもこのところ、クラシック音楽の話題が多くなっている日録である。
by kazeyashiki | 2011-10-09 11:00 | Music | Comments(0)

日日是好日

by 上野卓彦