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……に似た人

だれかを捜しているわけではない。
だが人混みのなかを歩いていて、
ふと知っているひとに似た人を発見したとき、
「ああ」と一瞬、懐かしい気持ちになる。
だがすぐにそれは、自分が意識的に懐かしがっているのだと気づく。
なぜなら、彼らはすでに天界へ旅立った者だからだ。
どことなく似ている。
背格好がおなじ。
雰囲気。
ファッション。
そして気配のようなもの。
おそらく近寄っていけばちがうと分かるだろう。
後ろ姿が似ていても、前からみれば全然ちがうということは多い。
横顔は似ているのに正面からみたら全くちがう、ということもよくある。
別段、似ていてほしいとは思っていないのだ。
似ている感じをみる、それでいいのだ。
そんな具合にして、ふと知っているひとに似た人を発見する懐かしさ、
ある種、郷愁感のような、望郷のような、思慕のような感覚。
地下鉄の混み合った駅構内、
階段やエスカレータ、
車内の端やドア横に彼らの姿をみつけることができる。
彼らはもしかしたら、
「たまには思い出せよ」
と、似た体軀の者に偶然を装って出会わせているだけかもしれないのだ。
by kazeyashiki | 2012-05-11 23:00 | 記憶 | Comments(0)

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