2012年 09月 06日
京都、久々
このところ大阪周辺を行ったり来たりしていたので、
電車に乗って出かけることが単純に嬉しい。
歩くのもまた楽しい。
京都は歩く町……という固定観念がおれにはある。
午前中、老舗店を切り盛りする女性を取材する。
濃密な2時間。
しかし受け答えが明快で整理されていて、全く疲れない。
つまり、対話が弾む。楽しいのである。
用意した質問事項がさらに磨かれた形になるのを感じる。
こういう時間はいい。
午後からスタッフと打合せをし、その後単独で下見。
古都でもっとも古い花街である上七軒を歩く。
これまで何度も足を運んだおなじみの界隈である。
しかしいくつか複雑な出来事があって、
ここしばらく遠ざかっていた場所だった。
花街は、絶対に宵闇せまってからのものだ。
だから午後の昼光のなかを歩くのは、どうも具合が悪い。
夜なら見えないものが見えてしまう。
昼空に張りつく白い月を眺めるようなものである。
揚げ足りない唐揚げみたいな感じもする(違うか)。
だが、写真を撮るには昼間がいい。
北野天満宮から上七軒の情景……
しかしこの花街を象徴する団子店は改装中で、
青いビニールシートが被され、内装工事の音と砂煙が上がる。
本番の撮影までに工事は終わるのか心配になる。
花街のなかを歩きまわると大汗を搔いた。
秋風らしきものが時折吹いてくるとはいえ、やはり暑いは暑い。
千本今出川の交差点まで戻ってきて、喫茶店に入る。
昭和レトロな「珈琲静香」である。
知る人ぞ知る、昭和13年創業の店である。
初めて入ったのは大学1年の時で、
地域の年輩者の方々が集う姿にとても緊張した憶えがある。
だが今はおれがその年輩者の一人であるから何の緊張もない。
さも馴れた所作でドアを開け、古いソファに腰を下ろす。
「ホットを。ミルク砂糖はいりません」なんて、あーいやだねえ。
お客さんは近所の女性や、ご隠居さん風情の好々爺、
観光でやって来た中年夫婦が物珍しそうに店内を見渡していた。
やはり京都はいい町だなと思う。
繁華街まで戻ってきて、つい一杯飲みたくなるが、
ここ一週間、まったく飲んでいないので飲みたい虫が騒ぎそうだ。
飲むとだらしなくなるのは必至なので、やめて帰路に着く。
ちょいと一杯のつもりが、
〈そういえばK君の店に久しく行っていないな〉
〈Yさんが小さなカウンターバーを始めたと言ってたな〉
〈M君に連れられて行った店はよかったな〉
などと、一杯目の酒の酔いで発火してしまう傾向が大だ。
[年間を通して煩悩の数だけ酒を飲む]
という決め事をしていたのは新聞社のOさんだが、
おれもそれに習って、月に9日だけ飲むという目標を立てた。
8月31日に飲んだが、9月はまだ飲んでいない。
明日、東京からS君が日帰りで来阪するので、
最終新幹線まで新大阪界隈で飲むことになっている。
それがあるから今日は、というわけだ。
……と、言い訳しながら自分を馴らしているのが恥ずかしい。